コラム

介護の現場では保全のためにPCR検査を頻繁に受けるべきかのか

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、介護業界でも以前よりはPCR検査を受ける期間は増えてきたといえます。

 

唾液を使った簡便な検査も可能になったことがその背景にはありますが、発熱や咳など感染が疑われる症状がみられる場合、すぐにPCR検査を受けることが可能になったことで安心できます。

 

ただ、医療や福祉の現場ではすべての職員がPCR検査を受けるべきでは?といった声も耳にするものの、はたしてそれが本当に正しいことなのか疑問を感じる意見も聞かれます。

 

新型コロナウイルス感染拡大が介護現場に及ぼす危機

実際、新型コロナウイルスの感染拡大はまだ続いており、緊急事態宣言の発令と解除が繰り返されています。

 

そのような中で日本感染症学会と日本感染環境学会は、感染症診療のあり方について変えていかなければならないのでは?という考えを示しているようです。

 

実際、診療に携わる臨床現場などでは軽症の患者に対してPCR検査を勧めていないとされ、医療崩壊を防ぐためには重症患者の治療に特化することが必要としています。

 

仮にコロナ陽性者が発生したデイサービスに通所する利用者とマスクごしに少し会話をしただけで、PCR検査を念のために受けておきたいという要望も出てくることはあるでしょう。

 

そのとき、感染リスクがほとんどないと考えられる方にも、希望すればいつでもPCR検査を受けてもらうことが望ましいのでしょうか。

 

介護施設は新型コロナウイルス感染症に対し、病院など医療機関よりも脆弱といえます。仮に崩壊した場合でも、誰も守ってはくれません。

 

実際、新型コロナウイルス感染拡大により大きな危機に直面しているデイサービスなど通所介護では、感染リスクを恐れ休業に踏み切るしかないという動きも見られます。

 

そして休業してしまった通所介護に通っていた利用者は、サービスを受けることができず心身の機能を低下させてしまうリスクも高めるといえるでしょう。

 

さらに自宅で介護をする家族の負担も増し、通所介護の代わりに訪問介護を利用したくても、ヘルパーが不足していて支援が届かないといった問題も起きています。

 

新型コロナウイルス感染拡大の影響は、介護を取り巻く様々な状況に危機を与えているのが現状です。

 

 

PCR検査の原理

そもそもPCRとは、「Polymerase Chain Reaction」の頭文字を取った言葉で、ポリメラーゼ連鎖反応を省略した呼び方です。

 

DNAサンプルから特定領域を数百万から数十億倍までに増幅させる手法であり、DNAやRNAなどを合成する酵素をポリメラーゼといいます。

 

元のDNAを一旦バラバラにし、特定の配置に起点をくっつけ、その起点から1本になったDNAと対になる塩基をくっつけ伸ばすことを繰り返します。

 

それにより2つの起点に挟まれた部分のDNA鎖を倍増させ、検出できる量にする仕組みになっています。

 

コロナウイルスはRNAウイルスのため、RNAをDNAに逆転写させるステップがまず入るものの、考え方は同じです。

 

PCR検査の検体の中にコロナウイルスと同じ配列を持つRNAがあれば、それが増幅されることで陽性と判定されます。

 

PCR検査の精度は高いのか

実はPCR検査の精度はそれほど高いとはいえず、感染者が正しく陽性と判定される割合を感度、感染していない方が陰性と判定される割合を特異度といいますが、PCR検査の感度は70%前後で特異度は約99%とされています。

 

感染者100人に対しPCR検査をしても間違って陰性と判定される方が30人は出てくるということであり、反対に感染していない方100人に対しPCR検査をしても1人は陽性と判定されるということです。

 

感度の割合が70%である理由は、検体が適正に採取できていないことも考えられますし、特異度についても検査中の手技上のミスや取り違えなどが起きている可能性がゼロとは言い切れないといえます。

 

そもそもPCR検査は1つのDNA片から検出可能とする手法のため、超微量なウイルスや感染力のないウイルスの死骸なども検出してしまい、偽陽性が出てしまうこともあるでしょう。

 

人がウイルスに感染する際には、ある一定以上のウイルスに曝露されることを必要とします。仮にそれ以下の量のウイルスが咽頭などに付着してしまった場合でも、自然免疫で処理されるようです。

 

仮にPCR検査で陽性と判定された場合でも、発症から10日、解熱から3日過ぎれば職場に復帰してもよい基準となっているため、検査で陽性だったから感染させるとは言い切れないとも考えられるでしょう。

 

大切なのは感染拡大させない対策

新型コロナウイルスに感染しているか確認することは大切なことであり、介護現場の職員から利用者に感染拡大させ、重篤化させてしまうことは避けなければなりません。

 

ただ、どのようなケースにおいてもPCR検査で判定することが望ましいとも言い切れないため、大切なのはウイルスを現場に持ち込まないことといえるでしょう。

 

そのためにも新型コロナウイルス感染防止対策を徹底し、職員や利用者が感染しないようにしてください。

 

なお、公益財団法人東京都福祉保健財団では「高齢者施設における新型コロナウイルス感染症対策強化事業」として、PCR検査費用など感染症対策費用の補助を行っています。

 

令和3年3月31日までに業務履行完了していることが必要になるなど要件があり、施設の種類によって補助される金額や補助率が異なります。

 

たとえば有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・ケアハウスは補助基準額200万円、補助率は2分の1となっているため有効活用するとよいでしょう。

 

申請手続きや提出期限などについては、東京都福祉保健財団ホームページを参照に確認し手続きしてください。

 

参考URL http://www.fukushizaidan.jp/314corona/index.html

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