コラム

介護のいろいろな場面で必要となる「トランス介助」とは

移動や転送という意味である「トランスファー」を省略した言葉として使用される「トランス」。介護業界におけるトランスとは、ベッドから車椅子に移乗させるなど、ある場所から場所に乗り移るといった動作を指す言葉として使われています。

 

身体的に問題のない方なら簡単な行動でも、足腰が弱くなっている場合や、身体の一部にまひなどがある場合には転倒してしまう可能性があるため、トランス介助という乗り移る動作に対しての支援が必要となるでしょう。

 

トランス介助を行うときに注意したいこと

トランス介助を行う場面は、1日に複数必要となるため、転落や転倒が起きないように細心の注意を払って行うことが求められるでしょう。

 

介助者自身に無理な力などが入って身体に負荷がかからないようにするためにも、要介護者にできるだけ近い位置でいれる状態を保つことができるよう、重心は低く足を開く姿勢が基本となります。

 

移乗の前には車椅子の点検を

正しい手順で移乗を行ったとしても、車椅子に異常がみられる場合には事故トラブルの原因となってしまいます。

 

そこで、車椅子は停車時にしっかりブレーキが効いているか、ワイヤーの伸びやカバーの折れ曲がりはないかなどを確認しておきましょう。

 

タイヤの状態はとくに注意

移動の際に段差にぶつかったとき、タイヤの空気圧が低い場合や消耗の程度が大きい場合には、受けたショックを吸収できなかったり、そもそもの乗り心地が悪いといった状況に陥ります。そのため、定期的に空気圧の確認は行うようにしてください。

 

また、長時間車椅子に座ることになると、腰に負担がかかったり床ずれが起きる原因になってしまいますので、できるだけ負担を軽減することができるよう、クッションや低反発マットを敷く工夫も必要です。

 

合併症の原因にもなる床ずれを甘くみないこと

床ずれは「褥瘡(じょくそう)」といって、寝たきりの状態など身体の同じ部分に体重による負荷がかかる場合、その部分に酸素や栄養が行きわたらないことで壊死してしまうことをいいます。

 

最初は皮膚が赤くなったりする程度ですが、次第にただれたり傷ができたり、摩擦により皮膚が剥離して真皮層が露出し、感染などを起こすこともありますので、車椅子でも定期的に体位変換といって座りなおす動作が必要になります

 

 

車椅子へ移乗するときに押さえておきたいポイント

ベッドから車椅子に乗り移る場合や、反対に車椅子からベッドに移る場合など、いずれも慣れない間はうまく移乗できないこともあります。

 

しかし、主な手順を知っておくことでスムーズにトランス介助が可能となり、介助者と要介護者、どちらも安心して移乗することができるようになりますので、次のポイントを押さえておくようにしましょう。

 

ベッドと車椅子の間隔を15~30度保つ

ベッドと車椅子の位置をできるだけ近づけるようにし、ベッドのフレームと車椅子のホイール面との角度は15~30度に保つなど、平行に停車するようにします。

 

ブレーキをかけてフットレストを上げる

車椅子のハンドブレーキはしっかりと固定しておき、車椅子が動かないようにします。足を乗せるフットレストは下げたままにしてしまうと、移乗の際に踏みつけて車椅子が跳ね上がる可能性がありますので、必ず上げておくようにしてください。

 

互いの腕の位置もポイント

要介護者にはできるかぎり、ベッドに浅めに座ってもらうようにしましょう。介助者の腕は要介護者の腰に、要介護者の腕は介助者の肩に回すようにします。もし要介護者が腰に痛みなどがある場合などは、背中を抱えるようにします。

 

前傾姿勢を意識して立ち上がりやすい状態に持っていく

介助者と要介護者の体を密着した状態にして、要介護者の上半身を自分の方向に引き寄せるように移乗していきます。上半身をうまく預けてもらうことで、重心が集まりやすい腰部分を自力で浮かせやすくなるはずです。

 

介助者が要介護者の体の方に自分の体を近づけてしまうと、腕力だけで体を持ち上げることができなくなり、ベッドに双方が倒れ込んでしまうことになります。

 

介助者は両脚を広げて安定させる

介助者と要介護者の上半身は密着した状態であっても、下半身は両脚を開いた状態で安定することが重要となります。

 

要介護者の両脚の外側に片足を置いて支えるような形にし、もう片方の足を車椅子の外側に置いて座面に腰を落とすような体勢にします。

 

声かけでタイミングを図る

体を持ち上げる時には、持ち上げる前に動かすタイミングの声かけを行いましょう。「せーの」でも「1、2、3」でも分かりやすい言葉でよいので、意思確認ができる声かけが必要です。

 

介助者と要介護者のタイミングがぴったり合うことで、力をなるべくかけることなく移乗することができるでしょう。

 

事故が起きないように安全なトランス介助を

車椅子からベッド、ベッドから車椅子へといった移乗は、介助者と要介護者の意思疎通が上手くできていなければ成功しません。事故を防ぎ安全に移乗するためにも、先にのべたような注意点や押さえておきたいポイントを守りながら実践してみてください。

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