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認知症の方の症状が今よりも悪化しないために行う介護のポイントとは?

認知症とは特定の疾患名ではなく、認識や記憶、判断する能力が低下し、社会生活を送る上で支障をきたしている状態を指しています。そこで、認知症の方に対して行う介護において、今よりも症状を悪化させないためにはどのようなポイントを押さえておくべきかご説明します。

 

認知症とはどのような状態?

日本神経学会の定義によると、一度正常に達した認知機能が後天的に起きた脳障害によって低下を持続させ、日常生活や社会生活を送る上で支障をきたした状態としています。

 

誰でも過去の体験などの一部を忘れてしまうこともあるかもしれません。たとえば一昨日食べた物は何か思いだせないとしても、何かを食べたことは記憶しており、落ちついて考えることで思いだすこともあるはずです。

 

しかし認知症の場合、何を食べたかではなく、食べたことも忘れてしまうようになったり、何を食べたか伝えたとしても思いだせない状態となります。

 

認知症の種類とそれぞれの症状

認知症には何が原因なのか、そして疾患によりその特徴や症状などが次のように異なります。

 

アルツハイマー型認知症

認知症の中でも最も多く、脳の神経細胞が減少することで脳自体が委縮し、少しずつ認知機能が低下する症状が進行することが特徴です。

 

近時記憶障害が目立ち、昨日や一昨日など近い過去のことは思い出せないものの、若い世代の時の知識や経験は忘れてないということもあるようです。

 

レビー小体型認知症

アルツハイマー型認知症の次に多く、老年期に発症しやすいことが特徴です。本人には認知症である認識がなく、脳の広い範囲にレビー小体という異常なたんぱくが溜まることで脳神経細胞が減少することで起きると考えられていますが、具体的な原因は不明です。

周囲の状況を認識したり、会話の内容を理解する能力など、良い時と悪い時の差が出てくることもあります。また、幻視など存在しないものが見えるようになったり、身体や表情が硬くなり動きが減少してバランスを崩しやすくなるといったパーキンソン症状がみられます。

 

脳血管性認知症

脳血管障害により発症する脳梗塞や脳出血が原因で発症する認知症で、認知症の症状だけでなく、歩行障害や手足のまひ、ろれつがまわりにくくなったり、パーキンソン症状や夜間せん妄といった症状が見られることも多々あります。

 

 

認知症の方に対する介護のポイント

認知症の方には、まず自分が周囲にとって必要な存在であることを認識してもらいましょう。

その上で、できることや得意なことなどをやってもらうと、達成感で喜びを得たり、信頼関係を築くことにつなげることもできるはずです。

 

反対にプライドを傷つけないように、もし記憶違いなどで間違ったことを言ったとしても、叱ったり指摘・否定すること、議論することは行わないようにしてください。

 

相手の意思を受け止め、声を荒らげず穏やかな状態で対応できるようにするべきです。

 

理解して欲しいからと、繰り返し何度も言い聞かせようとした場合でも、認知症の方には理解することが難しく、かえって反感を抱かせてしまうかもしれません。

 

認知症を孤独な状態にすることは避ける

孤独な状態は避け、人と関わる時間を定期的に設けることも必要です。介護施設ではレクレーションなどにも積極的に参加してもらい、他の入所者と顔を合わせたり交流する機会を設けるようにしましょう。

 

また、認知症の方はどのような行動をするのか観察することも必要になります。ソワソワしていたらもしかしたらトイレに行きたいけれど、そのことを伝えることができず困っているのかもしれません。ちょっとした変化を見逃さないようにしてください。

 

家族が介護疲れにならないために

在宅での介護サービスや通所でデイサービスを利用しているという場合、家族が介護疲れになっていないか配慮も必要です。

 

介護には休みがありませんが、介護を行う家族も一時的な休止(レスパイト)は必要不可欠です。ずっと介護に向き合い続けることは想像以上に体力や精神的な部分で負荷がかかります。

 

しかし、一時的でも気分をリフレッシュする時を設け、自分だけの時間を過ごすことでまた介護に向き合うことができるでしょう。このような時間を支援するレスパイトサービスは、介護保険を利用して介護サービスとして利用することができます。

 

また、在宅で家族の介護をする時には、訪問介護を利用することで一時的な休息の時間を取ることもできます。

さらに生活圏の地域の介護事業所に通所や宿泊が可能となる小規模多機能型居宅介護などもありますし、認知症対応型通所介護ならデイサービスを利用することも可能です。

 

自宅での介護が難しい場合には、認知症対応型共同生活介護でグループホームを利用し、共同生活を送ってもらうことも可能ですので、介護する側、される側、どちらにも無理が生じない形で生活できる形を取ってもらうことが必要です。

 

認知症を正しく理解してしっかり利用者と向き合うこと

もし家族が認知症になってしまったら、忘れてしまうことへの寂しさを感じたり、時には腹立たしさやいら立ちなどでやり場のない思いを抱えることになるかもしれません。

 

ただ、認知症の方はすべてができなくなるのではなく、できることもたくさんありますので、本人や家族が希望する生活を送ることができるように、安心して介護サービスを活用してもらえるようなケアを行うようにしましょう。

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