介護施設などで働いている職員は、利用者のプライバシー保護を徹底して行うことが必要です。
現在は個人情報保護法などにより情報開示なども制限されていますので、介護の現場で利用者のプライバシーが侵害されてしまうと損害賠償責任が発生する可能性もあるからです。
しかし介護施設などでは入居者やその家族についてなど、想像しているよりも多くの個人情報を取り扱うことになりますので、得た情報は厳重に管理し慎重に扱うことが必要と留意しておきましょう。
介護現場で守らなければならない入居者のプライバシーとは？
例えば入居者をケアするための情報だけ見ても、既往症、投薬状況、食材のアレルギー、食事の好みなどいろいろあります。
さらに入居者が介護施設に持ち込んでいる現金の金額なども情報の1つといえますし、身近なところでは入居者の家族構成や経歴なども個人情報に含まれます。
これら入居者の情報は、2005年に施行となった個人情報保護法、そして厚生労働省が2004年に規定した「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」に基づいて適切な管理・使用が必要です。
介護施設によっては独自にプライバシーポリシーを設定し、得た個人情報は適切に管理・使用することを掲げるといった対応も行っています。
万一入居者やその家族の個人情報が漏洩してしまった場合、介護施設の規模を問わずその責任を損害賠償金として負担する可能性も出てくるでしょう。
デリケートな部分は特に配慮が必要に
介護現場では、入居者の排せつや入浴などデリケートな部分も介護職員が手伝うことになります。
肌を人前で露出することは、相手がたとえ家族であっても恥ずかしいことであり、ましてや介護職員など他人の前ではその気持ちがより大きくなるものです。
そのため排せつや入浴の際に、他の入居者に聞こえるような大きな声で声掛けを行う行為や、目隠しなどをせずに肌を露出させることは、プライバシーを侵害する行為につながると認識しておくべきでしょう。
介護福祉士が守らなければならない守秘義務とは？
介護福祉士は守秘義務があるため、介護現場で働き業務を行う上で知り得た個人情報などを他人に漏らすことはできません。
入居者のケアを行い会話の中でも、プライベートの情報などを知ることもあるでしょう。その情報を他の入居者に本人の許可なく話す行為は守秘義務に違反する行為です。
介護福祉士法では、守秘義務違反は1年以下の懲役又は30万円以下の罰金を科すとしています。
複数の入居者との会話の中で、何気なく話した内容が守秘義務違反になることもありますので、十分に注意しながら入居者とのコミュニケーションを図っていきましょう。
介護現場で注意したいのは相部屋の時
介護施設の種類により、入居者が生活するスペースは全室個室という場合もあれば、複数の入居者が同じ部屋で生活する多床室の場合もあるでしょう。
個室であれば比較的入居者のプライバシーは守られやすいですが、多床室の場合にはケアを行う上でプライバシーが守られにくいと感じる方も少なくないようです。
介護職員との会話が他の入居者の耳にも入りやすいですし、介助を行う時にはカーテンで目隠しをしておかなければ目にも触れやすいです。また、排せつに失敗した場合など、臭いなどが伝わりやすい点も多床室のデメリットといえるでしょう。
そのため入居者が安心して介護施設で生活するためにも、それぞれのプライバシーが保護されるような体制や工夫が必要となります。
多床室は介護職員にとってはメリットが大きい
ただ、多床室は介護職員が1度の巡回で複数の入居者の状態確認を可能とするため、結果として手厚い介護につながりやすい点はメリットとして挙げられます。
しかし入居者にとっては、1人になりたい時間があってもそうなりにくい点がデメリットですし、他の入居者にケアを受けている姿を見られたくないと感じてしまうものです。
入居者のプライバシー保護の観点から考えれば、すべて個室で対応することが望ましいといえますが、人材が不足がちの現場で完全なプライベート空間を作ることは難しいといえますし、多床室から個室に造り変えるための費用もかかってしまいます。
そもそも入居者が過ごす部屋を全室個室にしたとしても、基本的に共同生活の場であることに変わりないため、食事スペースや談話室など共有スペースで過ごす時やレクレーションの場では入居者ごとのプライベートに配慮した対応が必要となるでしょう。
不満を感じた時にはすぐに伝えてもらう
多床室では個室ほどプライバシー保護が難しい場合もあり、管理にも限界を感じてしまうものでしょうが、情報を漏洩させない気配りや工夫が必要です。
入居者本人とその家族にも介護施設側と協力してもらえるように、不満を感じた時にはすぐに伝えてもらえるように適切なコミュニケーションを取っていくようにしましょう。