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外国人技能実習制度に介護の分野が追加された?

平成29年11月1日、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」が施行されたことに合わせて、法案の一部に外国人技能実習制度の対象となる職種の中に「介護」の職種も追加されています。

 

もし外国人の方で、日本の介護現場で働きたいと考える方がいたら、今後どのような流れで採用に至ることができる可能性があるのか確認しておくとよいでしょう。

 

多くの外国人労働者が介護現場で活躍できるように変わる?

2018年11月、政府は新しく在留資格が創設となる出入国管理法改正によって、2019年から5年間、最大約34万5千人の外国人労働者を受け入れるという発表をしています。

 

外国人労働者の受け入れ対象となるのは、顕著に人手不足が問題視されている14業種であり、その中でも「介護」の職種は受け入れ数が最も多く設定されています。

 

約5千人が介護の担い手として受け入れされること見込まれていますが、在留資格としては、一定の技能が必要な仕事に就く特定技能1号、さらにこの特定技能1号に永住権が付帯された特定技能2号が新設されています。

 

特段の事情などがなければ、この数字を超える受け入れは行わないとしていますが、人手不足の現場が問題視されている介護の職種にとっては救い手となる可能性もあるでしょう。

 

介護現場で働けば在留資格が得られる?

介護分野に対する外国人労働者の受け入れは最大5年間としていますが、実際、介護現場の職員の7割近くが、スタッフの人数について不足していると感じているようです。

 

熟練した技術や知識などを身につけたれば永住権を手にすることもできる新しい在留資格の創設で、多くの外国人労働者が介護の現場に目を向け始めることも予想されるでしょう。

 

 

言葉の壁は取り除くことができるのか

気になるのは外国人労働者が介護現場に増えることで、利用者にサービスを提供する上でのコミュニケーションには問題は生じないかという部分でしょう。言語の壁が問題となり、スタッフ同士の連携などに支障をきたす可能性もあります。

 

その不安部分を払拭するためか、現在の技能実習制度では日本語能力試験が含まれています。

 

このことが外国人労働者の受け入れに支障をきたしているともいえるため、施設独自の判断に任せてほしいという意見もあるようです。

 

今後、外国人労働者の受け入れについての具体的なルール設定については、法案が成立された後で明確化されることとなるでしょう。

 

現在日本にいる外国人労働者の日本語レベル

実際、外国人労働者を介護現場に受け入れる時にやはり語学力は課題として挙がることが考えられます。

 

経済連携協定で受け入れされたインドネシア人やフィリピン人は、その約9割以上が就労時に日常的に使用される日本語をある程度理解できるというレベルです。

 

しかし、介護事業所で介護を任せることのできるレベルとして考える語学力は、より幅広い場面で使用される日本語をある程度理解できる能力です。

 

そうなると、介護現場で外国人労働者が就労することになっても、十分にコミュニケーションを利用者やスタッフととることが難しく、労働力としては期待できない可能性も出てくると考えられます。

 

コミュニケーションの不通が大きなトラブルになる可能性

確かに介護現場は人手不足なので、猫の手も借りたいほど忙しいと言っても過言ではない事業所も存在します。しかし、身体が不自由であったり、意思を的確に伝えることができない高齢者などがいる施設において、本当にコミュニケーション能力が十分でない外国人労働者をスタッフとして迎え入れてよいのかという疑問は出てくるでしょう。

 

介護分野は利用者とのコミュニケーションはもちろんのこと、スタッフ同士での引き継ぎや意思疎通なども重要になるため、言葉によるコミュニケーションがしっかり取れることが求められます。

 

語学力に不安があれば、現場全体が混乱する可能性もあるでしょうし、高齢者に危険が伴う結果を招く恐れも出てきてしまいます。

 

外国人労働者の受け入れ前の体制整備が必要

日本で外国人労働者を介護現場に受け入れるために、現場に出て実際に働くことになっても対応が可能になる体制を整備することが求められるでしょう。

 

また、他業種では外国人の技能実習生に仕事を与えず、配置転換の希望なども無視されるといったブラック企業が存在していたり、自己都合で他の企業に移ることができないなど満足してもらえる職場環境でないケースもあるようです。

 

出入国管理法改正による外国人労働者の受け入れが拡大され、介護もその1つとして含まれることになりましたが、その前にまずは外国人労働者を受け入れる体制が整備されることが必要といえるでしょう。

 

せっかく人材を迎えても、労働力として発揮できない状況であれば事業者も負担になりますし、働く外国人労働者も苦しい思いをするだけです。

 

介護現場の人材不足を解決することは早急な課題とはいえますが、外国人労働者を受け入れるための労働環境についても考えてもらわなければならないといえるでしょう。

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