介護の分野では、「介護」と「介助」という言葉が頻繁に使われます。どちらも似た言葉であり、意味も同じでは?と思う方もいるでしょうが、厳密には異なる意味を持っています。
そこで、それぞれの言葉の意味を理解しておき、介護の現場で働く時に正しく使い分けることができるようにしておきましょう。
「介護」とは何を意味する言葉?
「介護」とは、老齢などを原因とする場合に身体または精神上、障がいがあることで日常生活を営むことに支障を抱えている方が、自立した生活を送ることを可能とする健康や生活上の介助や援助を行うことをいいます。
日本で一般的に「介護」という言葉が使われるようになったのは1970年代後半からで、公的介護保障を障がい者に対して求める運動がきっかけといわれています。1980年代半ばには制度として介護派遣事業が設けられ、身体の世話を行うだけでなく、自立により快適な生活を送るための支援という考えに変わっていきました。
見守りや声がけなど、身体に触れず精神面を支援することや、社会的な支えなども介護という言葉には意味として含まれています。
「介助」という言葉の意味
「介助」とは、高齢の方や病気や障がいを抱える方に付き添って、直接、日常生活における行動を支える身体的な動作のことです。
日常生活のおける動作には、食事や排泄、入浴、着替え、移動、コミュニケーションなどが含まれます。
これらの動作を可能とするように、食事を作ったり、生活に必要なものを買って補充したり、洗濯や掃除、身の回りの世話、外出時の援助などを行うことが介助です。
介助を含む介護を行う「介護者」の役割
「介護」と「介助」の違いを改めて確認すると、「介護」という枠に具体的な支援である「介助」が含まれていることが理解できるはずです。
介護を行う「介護者」は、日常生活における介助を行い、改善できる部分や工夫することはないか、医師や看護師などと情報交換を行いながら、福祉と医療が連携できるかけ橋としての役割も担います。
日本は少子高齢化に加え長寿化している状況なので、すでに介護は特別なことでなく、誰にでも起こりうるごく身近なものになっています。
今後、介護福祉分野はさらに変化をとげ、介護者の手がさらに必要になる時代となるでしょう。
介護サービスを利用する方たちが快適に生活できるように支援を行う介護者としての仕事は、やりがいと誇りを持ちながら働くことができる分野といえます。
介助で最も大変な「排泄」の介助のポイント
では、具体的に介護者としてどのように介護を必要とする方を介助すればよいのでしょう。
介護の中でも最も大変で、避けて通ることができない「排泄」の介助を例に、おさえておきたいポイントを確認しておきましょう。
適切なケアが可能になれば、介護の負担を大きく軽減することに繋がりますし、介護を受ける方も安心した生活を送ることができます。
ポイント1
介護を必要とする方の手足の長さや体型はそれぞれ異なりますので、それぞれに合った適切なベッドの高さや介助方法を選ぶようにしましょう。
ベッドの高さを、介護を受ける方の膝の高さに合わせれば、腰にかかる負担を抑えることができます。
ポイント2
人の身体本来の動くしくみに逆らわないことがポイントです。体位変換を行う場合、もし元気な人ならどのような動きをするのかを考えて動かすようにしてください。
時にはテコの原理など活用しながら、できるだけ力を入れずに動かすことで、介護を受ける方も介護者も負担を感じることなく安全に介助できます。
また、指先で行おうとせずに手のひら全体を使うことを意識してください。それによって、介護を受ける方にも優しく触れることができ、介護者の力も最大限に活用することに繋がります。
ポイント3
つい素早く介助しなければならないと慌ててしまいがちですが、介護者が安定していることが安全を保つことにつながります。そのため、1つ1つ動きを止めながら慌てず、次の動作に移ることを意識しましょう。
介護を受ける方に動くことを伝えるなど、声かけを行いながら次の動作に移ると、介護を受ける方も一緒に力を出すことができるので、楽に体を動かすことにつながります。
ポイント4
排泄はプライバシーや尊厳にかかわる部分なので、介護を受ける方の気持ちに配慮して介助を行うことが最も大切です。
おむつや衣服の着脱の際には、できるだけ脱いでいる時間を短縮できるようにしましょう。
ポータブルトイレの介助を行う時には、ズボンとおむつの後ろ側だけ先に下ろし、トイレに座わってから前は介護を受ける方自身で下ろす、もしくは大判のタオルなどで隠して脱がせるなどの配慮を行います。
介助は介護を受ける方の必要なことを代行すること
介護とは、介助行為により介護を受ける方の日常生活を支え、生活を明日に繋ぐことができる援助のことです。介護を受ける方の性格や生活などを分析した上で、自立にむけて援助することなので、今後、高齢者が増える日本では大変重要な分野といえます。
介助には、食事や排泄、入浴、着替え、移動、就寝など様々ですが、介護を受ける方が社会的に人として活動し、生きて行く上で必要な部分を代行することだとしっかり認識して行うことが大切です。