コラム

介護保険法改正と介護報酬改定の今後の行方は?

2019年2月から始まった介護保険法改正審議は2019年12月で終了となり、今後は通常国会で改正介護保険法案の審議を経て、2020年5月に成立することとなります。

 

2019年10月に消費税が増税されたことが関係し、国民の負担が増える改正は先送りされたわけですが、どのような内容が先送りとなったのか、今後、介護報酬の改定などはどのような動きを見せることが予想されるのか知っておきましょう。

 

どのような介護保険法改正の内容が先送りに?

先送りとなった介護保険法改正の項目には、

  • 介護保険料負担年齢を30才に引き下げる
  • 補足給付対象の所得基準に不動産など資産を追加
  • 介護施設多床室料を全額自己負担
  • 居宅介護支援の自己負担1割を導入
  • 訪問介護の生活援助、通所介護の要介護1~2は市町村に移行する
  • 自己負担2割の対象年収を引き下げる
  • 現金給付を導入する

などがあります。

 

先送りになった項目に対し、高額介護サービス費を年収基準とするなど、診療報酬に合わせた形は導入されることになります。

 

これにより、年収770万円までは4万4千400円が上限ですが、年収770万円を超えた場合には9万3千円、1千160万円を超えた場合は14万100円が高額介護サービス費の上限です。

 

ただ、医療と違って介護保険の対象となるのは高齢者です。さらに要介護認定を受けている方のため、この改正による上限の影響を受ける介護サービス利用者は限定的であるともいえるでしょう。

 

補足給付では第三段階が2区分に分類されることとなるため、全国30万人の施設入所者が毎月2万2千円、支払い負担が増えることが見込まれています。預金残高が第二段階では650万円以上、第三段階1は550万円、第三段階2は500万円以上で、補足給付を受けることはできなくなります。

 

これは国民年金受給者などにとって厳しい内容であり、長期滞在可能とする利用者そのものが減ってしまうことが予想されます。

 

先送りになった項目は、近い将来に実施される可能性が高いと認識し、施設側も中・長期的に計画を立てることが必要になると考えられるでしょう。

 

 

市町村への移行が先送りになった本当の理由は?

消費税増税が影響し先送りとなった項目の中に、訪問介護の生活援助、通所介護の要介護1~2の軽度者の市町村への移行というものがあります。

 

地方などの場合、市町村で受け皿となる総合事業などの整備が遅れており、もし要介護1~2の軽度者を市町村に移行してしまうと、介護サービスを利用できない介護難民が発生してしまうからでしょう。

 

今回の介護保険法改正により導入となる財政インセンティブ強化は、市町村事業を促進させることが目的です。

 

2018年からインセンティブ交付金が設けられたことで、市町村は高齢者の自立支援や介護予防強化に取り組み励んでいます。

 

そこで交付金取得基準にポイント制を導入する改正を行い、より市町村事業を促進させようと考えていることが予想されます。

 

事業が促進し、整備が整った時点で訪問介護の生活援助や通所介護の要介護1~2の軽度者の市町村への移行を本格的に実現させるという考えなのかもしれません。

 

2021年度改定で報酬に反映

2020年、再度介護保険法などの改正が行われると管型場合、介護保険部会の取りまとめ実施による趣旨が法律に反映されることになります。

 

仮に市町村や都道府県に介護現場を革新させるための基本計画の作成を求め、さらに事業所にもその基本計画に基づく介護現場革新への努力が義務づけられたとしたら、現場からは基本報酬を増額させる声も多く上がることが予想されます。

 

仮に基本報酬を増額させることが難しい場合、何らかの形で介護現場の革新を絡めた加算措置が必要です。

 

例えば処遇改善加算の要件に新たな取り組みが加えられるなど、事業所にとって要件をクリアするハードルが高まることも考えられるでしょう。

 

それにより処遇改善加算の効果が薄れてしまうと意味がありませんので、サービス提供体制強化加算や特定事業加算などに新区分を設け、介護現場の革新に対する取り組みを要件にするといったことも行われる可能性があります。

 

取りまとめの中で、介護報酬上のインセンティブ措置を求めるといったことも論点として挙げられるかもしれません。

 

今後注目しておきたい動向

内閣府が主導する全世代型社会保障検討会議の最終意見は2020年6月に出される骨太の方針と成長戦略に盛り込まれます。

 

今後の社会保障改革の基盤となる内容であるため、規制改革推進会議の動向などにも注目しておいたほうがよいでしょう。

 

その内容が介護保険制度に影響する可能性は非常に大きく、今後の方向がある程度決まると考えられるからです。

 

また、社会福祉協議会福祉部会で審議されている新しい法人体系の社会福祉連携推進法人にも注目しておくことが必要です。この法人は介護事業の大規模化の類型で、地方都市においての人材確保や事業拡大に期待されています。

 

社会福祉法人の事業展開に影響が及ぶ可能性が高いので、これらも合わせ2020年は介護保険事業の経営環境が大きく変化する年となるかもしれません。

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